心の病
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- ○ 心の病
心の病
自分に病名がついて安心する人。落胆する人。本やテレビで病名を見て、自分は病気ではないかと悩む人。一般的になってきたといっても、まだまだ「風邪ひいちゃった」とか「ちょっと食あたりしたみたい」という具合にはいかないのが、心の病の現状のようです。
周りにそのような人がいないから隠そうと思ったり、どのぐらいの症状になったら誰に相談すればいいのかわからなかったり…心の病に対する知識不足にも、その原因が考えられます。それを解消するための手始めとして、心の病にはどのようなものがあるのか、それにはどのような症状があるのかを、まずDSMやICDインターネットで検索するといいでしょう。
今通院しているのなら、主治医に説明を受ける手助けに、そのための入り口として使ってください。決して素人判断はしないようにしてください。病気というものは、症状の程度問題が重要な要素です。たとえば、眠れないこと・落ち込むこと・イライラすることはあって当たり前ですが、それらが重篤だと病気の診断が出て、治療が有効になることがあるのです。
自分に当てはまり、つらいということであれば、どうぞ迷わず病院や精神保健福祉センター等の精神科医に相談してください。このような名前が存在するということは特別なことではなく、たくさんの人があなたと同じように症状でつらい思いをしているということなんです。一人で悲観することはありません。逆に症状が当てはまらない場合でも、つらいと感じるのであれば、まず相談することをおすすめします。
「昔はそんなことを人に相談するなんてありえなかった」などと思う人もいるかもしれません。しかし、それは悩みを家族やコミュニティで共有し、支えあってきた事実ゆえのものです。問題自体が隠れていただけだったのかもしれません。相談することは恥ずかしいことでも、いけないことでも何でもありません。むしろ、真剣に物事を考えている証拠で、尊敬すべきことだと思います。
当相談室では当然ながら、病名の診断はしません。できません。さらに私は、あまり病名を重視していないのです。もちろん病気を治して健康になるということを否定するわけではないのですが、病名にとらわれるのではなく、困っている症状、そしてそれをどうしていきたいかという希望、どのように生活していきたいかが大切と考えています。一つの要素ですべてが決まることはないのですから。病気でなくとも、コミュニケーションや人間関係の悩みなどもあるのですから。
たとえ病気になったとしても、服薬することになったとしても、何も特別な人になったわけでもなく、隠さなければいけないものではありません。ちょっと探せば治療や相談をする、社会資源は数えきれないほどあります。決してあなたは一人ではないのです。周りにその人がいるのなら、あなたが支えてあげられる人になってあげてください。
もともと精神科の診断には、内科などのように明確な世界共通基準がなかったようです。学派ごとであったり国ごとであったりという具合に。そこで、共通のものとしてDSMとICDが作成されました。DSMは症状面を重視し、分類・診断したアメリカ精神医学会版といえるもので、ICDはWHO版。もともと統計分類のためのもので、治療・対処法のものではないようです。これに加え、古くから使われているもの(内因性とか、ヒステリーとか聞いたことありますよね)もありますので、病院や医師によって診断名がばらばらになることは日常的なものだったようです。
病名分類よりも、治療や予後、幸せに生活できるかということの方がずっと大切なことです。これは声を大にして言いきります。病名というたった一つの要素にとらわれるのではなく、生活全体として考えていくことがずっと大切なんです。