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カウンセラーの独り言

目次

もう届かない君に

私は古新聞のようになりたい
この世に一つしかない壊れやすいコップのようなあなたのこころを
きれいなリボンのように飾ってあげるのではなく
明日の日常が始まるまで つつんで傷つくことから守りたいから

私は古新聞のようになりたい
雨に降られぬれてしまった靴のようなあなたのこころを
高価な洗剤のようにきれいに洗ってあげるのではなく
明日の朝に 湿気を吸って歩き出せるようにしたいから

私は古新聞のようになりたい
太い木切れのように固く燃えにくくなってしまったあなたのこころを
ガスやオイルのように一気に燃え上がらせてあげるのではなく
自分が火種になって ゆっくり燃えるよう手伝いたいから

私は古新聞のようになりたい
毎朝、眠そうなあなたを
今朝の新聞のように新鮮で活気のある話題で押し出してあげるのではなく
掃除の時に手を止めて読んで昔を懐かしむような
ほのぼのとした気持ちを届けたいから

古新聞はいつまでも一緒にはいられないけれど
その時はきれいなティッシュと交換して下さい
そしていつものあなたの生活のそばにあるそれを大切に
そう それで充分なのです
連絡がないのは楽しく暮らしている証拠
そう思います
必要になったらその時にまた呼んでくれたらいい
それでいいのです

そう感じるようになってから
部屋の隅でまとめられた 押入れやたんすに敷かれた
あの古新聞たちが
私にたくさんのことを教えてくれる大切な存在になった

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